MEMO
▼リンハルトとカスパルについて
「千里七海旅行記」の著者はリンハルト説が濃厚だけど、彼が旅先でカスパルとの思い出を筆にしたためていたのかと思うとものすごく愛おしさを感じるのですよね。家族や恋人の写真を撮って、アルバムに綺麗に挟んでいくような感じなのかな。
リンハルトのカスパルに対する愛情(広義)って、空を飛んでいる鳥を「綺麗だなー」って眺めはするけど捕まえる気はないみたいな、自由に空を飛んでいる姿こそ美しいと思っているので損なう気はないみたいな…でも怪我したら嫌なので見守っている、みたいな感じなのかなあ。
カスパルが四度もリンハルトに「騎士団にいるでかいやつにやっと勝てた」ことを話すの、「オレの武勇伝を聞いてくれ!」ってやつかと思ったら「オレとお前の勝利だから」って理由なの愛しすぎる。
リンハルトが白魔法を得意になった理由が「カスパルがよく無茶をして怪我をするから」というのがリンハルトらしくていいなあ。「カスパルに無茶をやめさせる」ではなく「カスパルが怪我をしても治せるように自分が白魔法を覚える」というのが、カスパルの意思を尊重してる感じがするというか。カスパルに怪我はしてほしくないけど、カスパルのやりたいことを止めるつめりもないのかなって。「無茶するな」とも言っているとは思うけど、そんなに強く引き止めてはいない印象。
リンハルトとカスパルに限らず風花のキャラは「いろいろな結末」が見れるのがとてもいい。ハッピーエンドとも言えるペアエンド、二人揃って戦死する本編での敵対ルート、リンハルトがカスパルを庇って死亡する黄燎ルート、選択によってはカスパルが先に死亡してしまう青燐ルート。それぞれが辿った別の未来との対比によって、幸福な未来の尊さ、あるいはそうでない未来の虚しさが際立つというものです。
リンハルトとカスパルのペアエンド、紅花だとカスパルは軍務卿への打診があっただろうし、リンハルトはエーデルガルトの政策によって嫌がっていた「家督を継ぐ」という役割から解放されて好きなことをできる状態のはず。それぞれにとって望ましい未来が約束されている状態なのに、そんな二人が選んだ道が「それらをほっぽり出して二人で旅に出る」だったのがよい。お互いの存在があればそれだけで何もいらないのだね、君たちは。
長男でもなく紋章も持たない、次男ゆえに家督を継ぐための教育も受けていない(でも家督を継げるなら嬉しい)カスパルからすれば、リンハルトは「長男の上に紋章も持っており、そういった教育を受けられる立場でもあるのにそれらを煩わしく感じている人」のはずなのだよね(リンドロのペアエンドからするに、リンハルトは領地の運営に関する勉強はしていなさそう)逆に、リンハルトからすればカスパルは「そういった煩わしいことを要求される立場ではない上に、貴族であるという恩恵は受けられる」というおいしい身分だと思われる(もちろん、嫡子でないがゆえに被る不利益があることも理解している)でも彼らはお互いのそういった環境に言及することはないのだよなあ。相手をきちんと「個人」として見ている。
リンハルトとカスパル、恋愛関係であったのならそれはそれで嬉しいのだけど「二人で一緒にいたい」という気持ちだけで一緒にいるのだとしてとも尊い。
彼らが恋愛関係であるとしても、結婚という「外部から見える形」というか「公的に絆を証明してもらった状態」というか、そういうものがなくても二人は最期まで共にあったというのが本当にいいのだよなあ。
カスパルとリンハルト、授業中は「なあ、ここがわからねえんだ。教えてくれよ」「また? めんどくさいなあ…」だと予想されるけれど、実習では「もうぜんぶ任せていいかな」「駄目に決まってんだろ!」「だいたいカスパルがやりました」「お前なあ…」なの、かわいいな…。
▼翠風ルートのリンハルトとカスパル
翠風ルートで敵対するリンハルトとカスパルが辿る結末は無情すぎてとてもいい。子供の頃に一緒に遊んだメリセウス要塞が戦場になり、二人はそこで命を落とすことになる。プレイヤーの方針によって二人を倒さずクリアした場合であっても、その後に落下してくる光の杭で(おそらくは)要塞ごと粉々になってしまう。「世界を変える力を持つ主人公という存在」であっても彼らが辿る未来は変えられなかった。
「生徒たちとはなるべく戦わないプレイ」をしている人の場合は、リンハルトとカスパルを倒さずにクリアして「いやー戦わずに済んでよかった」となっている時に杭が…となるのだと思うと、ブラックジャック的な皮肉を感じる。人間が生きものの生き死にを自由にしようなんて、おこがましいとは思わんかね…みたいな。
無双の黄燎ルートにおけるリンハルトの行動を鑑みると、メリセウス要塞での戦いで、光の杭が落ちてきたときにカスパルだけワープで安全地帯に転移させるリンハルトはいる気がする。そうやって生き延びたカスパルに「二人で生き延びようって言ったのお前じゃねえか!」って怒られてほしい。
カスパルとリンハルトの敵対会話、リンハルトは本編でも無双でも「僕たちが喧嘩するのはこれが初めてさ」「また喧嘩できる日を、僕が望むなんてなあ」と次があるかのような言い方をしているいっぽうで、カスパルはいずれも「最初で最後の喧嘩」と「ここでどちらかが死ぬ」という覚悟をほのめかせる言葉を使っているのだね。カスパルの「情に厚い熱血漢」というキャラ付けとは不釣り合いにも見えるシビアな価値観は、軍人の家系で生まれ育ったことに起因するのかなあ。
▼黄燎ルート(リンハルト非説得時)のリンハルトとカスパル
黄燎ルートでリンハルトがカスパルを逃がすために囮になって死亡するシーン、「戦って死ぬくらいなら財産も領地も差し出して降伏する」という性格のリンハルトが、カスパルを守るために死亡したうえで「死ぬまで戦うなんて、柄じゃないんだけどなあ」という死亡セリフを口にするのがよい(汎用セリフだとは思うけど)
しかも、リンハルトは「オレのために死ぬとか考えんなよ!」と言うカスパルに「僕は好きに生きるよ」と笑顔で返したうえで死ぬという選択肢を選んだ。好きに生きた結果がカスパルを守るために死ぬという道だったのだね。
それに、「カスパルのため」なんて言ったら、きっとそれは生き残ったカスパルを縛る呪いになってしまう。「自分がカスパルを守りたいのでそのために死ぬ」という選択が自身のエゴであることを、リンハルトは自覚しているのだろうなあ。
あの行動がカスパルへの愛情(恋愛的な意味での)からであったとしても嬉しいのだけど、そうでなかったとしても「リンハルトはそういった関係でもない幼なじみのために自分の命を投げ出せる」ということになるのですごいなぁ…幼なじみ強いなぁ…。
ベルナデッタとの支援会話(カスパル死亡時差分)でリンハルトは「僕が一番死んでほしくなかった人は、もうこの地上にはいないしね……」と吐露するけれど、この気持ちの表れが黄燎ルートでのあの行動だったのかな。このシーン、カスパルから貰った髪紐が見えるアングルなのがとてもいい。
カスパルの行動についてリンハルトは「君、あのままだと死んでいたよ」と警告していたけれど、カスパル自身はそれでも構わないという心積りだったのかもなあ。ヒューベルトとの支援会話からして、カスパルは「勝利のために切り捨てる必要がある少数」が自分であると認識している節がある。
「勝利のために切り捨てる必要がある少数」が自分であると認識しているカスパルと、そんなカスパルを「僕が一番死んでほしくなかった人」と呼ぶリンハルト。でもリンハルトはカスパルが戦場に立つのを止めることはなく、「危ないことはしてほしくないんだけど」と控えめに伝える程度にとどめているのがなんか…好きだなあ…。
自軍の勝利のためなら自身の死を厭わない傾向にあるカスパルだけど、黄燎ルートでリンハルトが死亡したあとは「オレが死んだらリンハルトが浮かばれねえ」と、自身が生き延びることでリンハルトへの友宜を示しているように取れる。きっとそれがリンハルトの望みだと知っているからなのだろう。
▼青燐ルート(リンハルト説得時)のリンハルトとカスパル
リンハルトの「(カスパルは)死ぬ気は……負ける気はないんだから」の「死ぬ気」を「負ける気」に言い直すところに、カスパルに対する心構えみたいなものがチラ見えするようなしないような。「僕が一番死んでほしくなかった人」であるカスパルが前線に向かうのを、後方支援組であろうリンハルトはどういう気持ちで見送っていたのだろう。
カスパルと敵対することになったリンハルトの「また喧嘩できる日を、僕が望むなんてなあ」というセリフがすごく好きなんですよね。また喧嘩できるってことは、相手が生きているということだものね。
青燐ルートでカスパルが死亡したあとのリンハルト、カスパルの件で落ち込んでいるかと思いきや、カスパルの生き方を思い出して立ち直っているのだよね。「僕が一番死んでほしくなかった人は~」のリンハルトもいいけれど、カスパルが死んだあとも彼に励まされながら生きていくリンハルトというのもまたよい。
ここのリンハルト、「こんな時代じゃなかったらカスパルも死ぬ必要はなかったもしれない」とは言わなくて、むしろ「カスパルのようにこんな時代だからこそ輝く人もいる」と、死ぬまで戦うという道を選んだ彼の選択を否定しないのだなあ。君にとって彼は輝いていたんだな。
風花無双のリンベルの支援会話は「愛し合う二人が離れ離れのまま片割れが死んでしまうなんて悲しい」→二人が再会して「奇跡が起こることもあるんだね」という内容なのだけど、青燐ルートでリンハルトを引き抜いた場合だとカスパルが死亡して「彼らに奇跡は起こらなかった」という対比のようになるのが物悲しい。逆に、黄燎ルートの場合は「今後の彼らがわだかまりなく再会できる未来もあるのかもしれない」という希望が見える会話として読めるのだね。
▼リンカスとカスドロのペアエンド
結婚していないどころか恋愛関係であったかも不明なのに「二人は終のときまで、あるいは命尽きるまで共にあった」と描かれているリンカスやカスドロのペアエンドが大好きなのですね。「生涯を共にできるほど仲のいい二人は結婚するのが自然」という固定観念にとらわれ ていない感じがして。
赤毛のアンは作中に「結婚式で終わる物語よりも、お葬式で終わる物語のほうがロマンチックだわ」というセリフがあるらしくて「気が合いますね」となった。結婚なんてしなくても終わりのときまで傍にいたんだよね。
カスパルと生涯を共にしたと記述されている二人が「両性愛者であることを示唆されているリンハルト」と「結婚が自身の幸福に繋がると考えて積極的に婚活を行っていたドロテア」という、カスパルに恋愛関係を求めてもおかしくなさそうな二人なのがまた趣深い。
▼カスパルについて
カスパルは死亡セリフがほんとにいいんですよね。本編二部での「オレが死ぬのはオレが弱いせい……だから気にすんなよ……」という死亡セリフでは「指揮官である主人公」や「助けられなかった周囲の仲間たち」が責任を感じないように気を使っている。自分の死を誰かのせいにしないせいで、残されたほうはなおつらくなるのだろう。
「気にすんな……負けたら死ぬ、そういう喧嘩だろ……」「死んだらただの死体だ……オレに構わず、勝ちを……」という死亡セリフも「自分の死なんて気にするな」というの気遣いと同時に、カスパルの死生観のシビアさを感じさせる。カスパル自身も仲間たちの死をそう思うようにしてきたのだろうなあ。
「オレが強くなりゃ、みんなが楽になる」「ギリギリまで戦って、少しでも勝利に……」というセリフも仲間を思いやる彼の性格が出ていてとてもよい。
自分の父親が死亡したときも「いや、いいんだ」と言って悲しむ素振りを表情にしか見せず、その次には「親父はすごい」と笑顔を見せて相手に気を遣わせないカスパル、精神的に強いうえにいいやつなんだよな。
敵対したカスパルは「ここに来るまで何人、顔見知りを殺してきた?」と責めるようなことを言うのが彼らしくないなと感じるのだけど、彼を倒したあとの「気にすんな……負けたら死ぬ、そういう喧嘩だろ……」というセリフに繋がっているのだと思うと、つまり「これまでに何人もの顔見知りを殺してきたんだろうけど、それが戦争なんだから気にすんな」と…そういう解釈でいいのかカスパル?
カスパルの鎧が傷だらけであること、カスパルが耐久力に乏しいこと、無双のカスパルに自傷ダメージ系スキルが多いこと、カスパルが戦技の「連打」や「必殺」による先制撃破を得意とすること、そういった演出のすべてが「体格に恵まれないために搦手を駆使したり、肉を切らせて骨を断つような戦法を取っている」というカスパルというキャラの表現になっているのが本当にいい。
カスパルはよく「暗い展開が多い帝国ルートでも一部と変わらず明るいので場を和ませてくれる」というような話を聞くのだけど、そんな彼も銀雪ルートの終盤では「悲しみも、つらさも、清も濁も、ごちゃまぜに突っ走ってきたけどよ……」と「悲しいしつらかった」という心境を吐露するのだよね。それでも明るく振舞って仲間を鼓舞していたのかと思うとSUKI…としか言えなくなってしまう。
カスパルとお茶会をしているとき、「仲間の評価」の話題をふると興味を示さないのとてもいいな。カスパルの努力は自らを磨くためのものなので「他人から見た自分の評価」も「自分が他人を評価すること」もどうでもいいのだろうなあ。
カスパルは努力家で熱血漢なのに、現実的で冷めている部分もあるのがギャップがあっていいなと思う。貴族制度や世襲制度(ダメな兄が家督を継ぐこと)を「仕方ない」と割り切っていたり、ディミトリや王国を「あれは戦争じゃねえ、ただの私怨だ」「帝国出身のオレなんて信用してないんだろうな」と冷静に批判していたり。努力は惜しまない一方で「努力は裏切らないなんてことはない」と認識しているのもよい。
口では父親との仲はいいとも悪いとも言わないけど、カスパルの部屋にある「大量の手紙をやりとりした痕跡」から父親とかなり頻繁に連絡を取っているであろうことがうかがえるがとてもいい。「カスパルは父親と手紙のやりとりをしている」という設定が出るのは無双からなのに、本編の彼の自室には既にその痕跡があるのだなあ。
カスパルみたいなやんちゃなキャラは生活力が低そうなイメージがあるけれど、自室が綺麗だったり合同課題をだいたい一人でやったり(リンハルト談)数年間一人旅をしていたり…といった要素から、家事全般も自分が困らない程度にはやれそうなイメージがある。
カスパルの「あいつは帝国出身のオレなんて信用してないんだろうな」「でも、オレたちが帝国に勝ったら親父とかどうなるんだろうな」あたりのセリフを言うときの表情が、怒りでも哀しみでもなく「通常」なのが「熱血キャラなのに妙に淡々としたところがある」という印象に繋がっている気がする。
カスパルはいちおう弓も扱えるようだけど(無双のベルナデッタとの支援会話より)ただ射るだけならともかく、離れた位置にいる相手を射るってことは距離に対する射角の計算などが必要になるということなので、そういった点から「苦手技能:弓術」なのかもなあと思った。
無双のカスパルの「死んだらただの死体だ」という死亡セリフ、他人に気を遣わせまいとする彼らしいセリフであると同時に帝国の人らしいセリフでもあるなあ(死んだら英雄、みたいな価値観がないあたりが)きっと彼も仲間の死をそう思うようにしてきたのだろう。
カスパルの「考える前に体を動かす」という傾向、「この手の熱血キャラのステレオタイプ」と言えばそうなんけど、彼が幼少の頃から軍人の家系で厳しい訓練を受けてきた身であることを思うと、「戦場という過酷な状況下では咄嗟に判断してすぐに動かなければ死に直結する」という価値観が根付いているからなのかもなあとも思える。
カスパルって表面だけを見ると熱血キャラのステレオタイプ(努力を惜しまず、他人を妬まず、考えるのが苦手で、恋愛にはあまり興味がない)なのだけど、風花はセリフや設定の端々から「彼がそうなるにいたった地盤」を感じさせるのがすごいなあと感じる。サブキャラの設定までしっかり作り込んであるのがほんと丁寧だ。
▼リンハルトについて
リンハルト、「Aについてどう思う?」と聞かれたときに「(BCDとなってEFとなるので)Gだよ」と結論だけ答えて「えっ? どういうこと??」と思われることはしばしばありそう。でも「なんでGなの?」と聞かれても説明するのはめんどう(BやCを説明するための説明が更に必要になる等の理由から)がるので、更に相手は腑に落ちない気分になってしまいそうな。
過程を省略して結論から話すものだから、そうだと理解していない相手には「リンハルトは意味不明なことを言う変なやつ」と思われている場合はありそう。カスパルの場合「リンハルトがどのような過程を踏んでその結論にいたったか」は理解できないけれど、きちんと理屈があったうえで結論を出していることは知っているので「お前が言うならそれで合ってるんだろうな」で納得してくれそうな。
そういったリンハルトの意見を聞いたときの仲間たちの反応予想
ヒュ「確かに理にかなっていますな」(どのような過程を踏んで結論を出したのか理解している)
エデ「詳しく説明してくれる?」(思考の過程はある程度想像できるけど、確認とほかの仲間への説明のためにリンハルトからの説明を求める)
ドロ「なるほど、そういう考え方もあるんですね」(自分でその発想は浮かばないものの、説明されれば理解はできる)
フェル「ふむ……君の意見は理解できるが、その場合こうなる可能性もあるのではないか?」(説明を理解したうえで、不慮の出来事が発生する危険性などの前線部隊としての意見を述べる)
カス「よくわからねえがわかったぜ!」(リンハルトを信頼していることに加えて、説明されても自分が理解できないことを理解している)
ベル「ベルにもわかるように説明してください!」(素直)
ペト「それ、どういう意味ですか? 説明、求めます」(言語の壁)
「わかったふり」はしないタイプなので「(なんでそうなのかは)よくわからねえが(それが解答だということは)わかったぜ!」なカスパル
リンペトの支援会話では、自分では実演できない(でも理屈ではわかる)助言をするリンハルトにペトラが「あなた、できない、助言、口だけ、言ってますか?」とちょっとイラついた感じに訊ねるのだけど、それに対する「僕にはできないかもね。でも、君にならできるよ。だから言ってるし」って返答スマートで好きだなあ。
「理屈でわかることと実演できるかどうかは別」というのはわかるし「口頭で動作を説明する(言語の壁もある)のは難しいから実演してくれ」という気持ちもわかるのだけど、こういう状況になると大抵の人は上から目線になったり喧嘩腰になったりするものだから、そこでスッとこういう言葉が出てくるところに品性を感じる。ペトラもそこで「助言、再度、願う、します」って言えるからいい子だよなあ。
「でも僕にはできないんだよ。誰かのために自分が働く、とかね」と言いながらヒューベルトを介抱するリンハルト、好きすぎる…この表面上はドライだけど実際はきちんと相手のことを思いやれる人であったうえで、でも「あなたのため」とは口にせず親切を押し付けないのがよい…。
リンハルトの支援会話というと、無双のベルナデッタとの支援会話(カスパル死亡差分)についてはまだ自分的にストンと落ちる解釈ができていない。「知ってる人の死はひどくて知らない人の死はひどくないの?」という言葉は彼の本音なのだろう(だからこそ彼は敵兵であっても血を見るのは嫌なのだろうし、今から手にかける相手の顔を直視するのも嫌がる)けど、そのセリフのあとで「僕が一番死んでほしくなかった人は……」と、「カスパルの死は自分にとって他人の死とは異なる」というようなセリフを言うのだよね。「理屈ではそう理解しているし、そう思うようにしているけれど、でもやっぱり親しい相手の死は特別に悲しい」といった気持ちの現れなのだろうか?
リンハルトとアネットの支援会話は、自他境界がしっかりしている帝国の人々と、それが曖昧な王国の人々の価値観の違いがよく出ていますよね。「こちらが困っているのだから手伝ってくれて当たり前」という要求をするアネットと、「それは君の仕事なのに、なぜ正当な理由もなく手伝わなければならないのか」と要求に対して理由の開示を求めるリンハルト。
銀雪ルートの「家滅んでもいい」発言でリンハルトを薄情者だと認識している人もいるのだろうとは思うのだけど、別にリンハルトは祖国や家族がどうでもいいわけではないと思っているんですよね。そうであるなら敵将の彼がメリセウス要塞なんて激戦区に登場するわけがない…ヘヴリング家は文官の家系のようなので後方支援に徹していてもよかっただろうし、マリアンヌのように戦い自体に参加しない選択肢もあったはず。
ヘヴリング親子はベルグリーズ親子ほどわかりやすく仲良しではないけど、リンハルトが訓練に参加させられそうになったときにヴァルデマーが激怒した話や、「家を継ぎたくない」という意思表示をしているリンハルトを強引に結婚させていないこと、開戦後に実家で寝てばかりいるリンハルトを容認しているあたりなどから、息子のことは割と甘やかしているのではないかな…と感じている。でもできればその才を有効活用してほしいと思っているし、家を継いでほしいとも思っていそう。
リンハルトはヴァルデマーのレオポルドへの態度を見て「素直にならないからそうなるんですよ…」とか呆れていたりするんだろうか。各種支援会話でのリンハルトの直球な愛情表現の言葉は、そんな父親を反面教師として見ていたからとか?
リンハルトってお茶会で「旅行したい国」の話題を選ぶと好感度が上がるんですね。ところで彼の著作(推定)に千路七海旅行記というものがありまして…幼なじみとの旅路を綴ったものなんですけど…。
リンハルトはバイだとは思っているのだけど、人を性的に好きになる際に個人より先に性別がくるタイプ(大浴場だと合法的に同性の裸が拝めるのでラッキー、みたいな)ではなく、個人に対する好みが先にあって性別はおまけ…みたいな感じかなと思っています。
▼二人の価値観について
カスパルはペトラに対して「オレだったら父親の仇を絶対に許せない」と語っているけど、本編の彼の言動を見ていると本当にそうなのかな…とは疑問になる。彼はルートによっては何人も親族を亡くす(殺害される)けど、それに対して復讐心を見せることも「自分はかわいそうです!」という顔もしないよね。さっぱりしたものだ。
カスパル(というか帝国の人々)って、「自分は自分、他人は他人」という線引がはっきりしているなあと感じる。自分が死亡するときも他人(敵対した相手や庇った相手)にその業を背負わせないし、親友のリンハルトに対しても「オレたちは一心同体だ!」みたいなことを言わない。他人の心を束縛することをよしとせず、他人に依存することもない。
リンハルトとアネットの支援会話にはその辺の価値観の違いが出ているのではないかなあと感じる。「こちらが困っているのだから手伝ってくれるべき」というようなことを言うアネットと「君の仕事なのになんで僕が手伝うの?」と答えるリンハルト。これ、たぶんアネットがやっていることが「アネットのやるべき仕事でない場合(何らかの事故で困っているなど)」や「リンハルトに対してきちんと理由を話して手伝って欲しいと伝えた場合」はリンハルトもしぶしぶ手伝ってくれたのではないかな?
リンハルトは支援A~Sの相手に対して率直な好意を伝える傾向があるけれど、それも「言わなくてもわかってくれるべき」「相手が自分にとって都合よく動いてくれるのが当たり前」という無意識下にある押し付け思想がないからなのではないかなと感じる。リンハルトとカスパルがいい距離感を保ち続けていられるのは、その辺の価値観が合致しているからなのかなあと。
リンハルトとカスパルって「共感」と「好意」をごちゃまぜにすることがないのだよなあ。カスパルは努力家で、努力することをよしとしているけれど、それを嫌うリンハルトにまで「お前も努力すべき」とは言わないし、リンハルトが努力しないからと言ってそれがリンハルトへの嫌悪には繋がらない。その辺の区別がつかない人だと、自分がよしとしているものを拒絶された場合それを「自分への不理解」だと判断して相手への嫌悪に繋がる場合も多いと思う。
カスパルはゴーティエ家騒乱の「マイクランが悪いことをしたのでやっつけるべき!」という空気の中で「そうだそうだ!」とはならず「どっちが悪いかはオレが(実際に見て)決めてえ!」「よその家の争いに他人が口出しすべきじゃねえ」といったドライな反応をするのが印象的なのですよね。この辺を見ていると彼の「善悪は他人ではなく自分が決める=他人の言葉に自分の意思を左右されない」という性格は、お国柄だけでなくベルグリーズ家のお家騒動も起因しているのかなあと感じる。
リンハルトやカスパルのこういう「自分の嫌っているもの(争いなど)を尊ぶ人に対してもそれを否定せず『君にとってはそうなんだね』で受け入れる」ところ、本当に好ましいと感じるのですよね。「自分の好きなものはみんな好きなはずで、それを嫌いという人は間違っているし、それは自分に対する否定でもある」みたいな考え方の人のほうが世の中には多いように感じる。
カスパルは努力家だけど「自分の努力を他人に見てほしい、知ってほしい」というタイプではなくて、努力はあくまで結果(戦功)を得るのための手段でしかない。リンハルトはペアエンドだと匿名で論文を発表することもあるけれど、単独エンドだと彼の研究結果が世に出るのは彼の死後になってから。そういう「自分の努力に対して他者からの賞賛を求めない」という点もリンハルトとカスパルの似通った部分なのではないかなあと思っている。
▼カスパルとエーデルガルト
カスパルに関して個人的に好ましいと感じる点のひとつが、「かわいそうさ」を売りにしていない点かも。「かわいそうなキャラ」って「守ってあげたい」「幸せにしてあげたい」という人の心を惹きやすいのだろうけど、自分の場合はそれをあざとく感じてしまうというか。「自分ならかわいそうな彼を救える」と思うのって高慢な気がする。
エーデルガルトはカスパルに「私はね、貴方のことをずっと犠牲者だと考えていたのよ。腐った貴族制度を壊してしまえば、貴方を救えると思っていた」と、同情と共に「彼を救いたいという気持ち」を向けるのだけど、カスパルは心外らしく「何でも自分基準に考えるのがエーデルガルトの悪い所」とばっさり否定する。この会話がなんとなく好きだったのだけど、もしかしたら「自分なら相手を救えると思っている人の高慢さ」を否定しているのが気持ちいいのかもしれない。
紅花ルートではカスエデがペアだったんですけど、そのあと銀雪ルートに行ったらカスパルがエーデルガルトに対して「あいつを止めてやらねえと」と言っていたのがとてもよきでした。帝国と敵対するルートでもカスパルは彼女の友人として戦っているのだね。
エーデルガルトを止めるために祖国も仲間も敵に回す紅花ルート外のカスパル、つらそうなので「これが最高!」とまでは言えないけれど、他のルートであっても芯がぶれていないのは彼らしくていい。
主人公と敵対したときは「きっとわかり合えるって思ってたんだ。けど、そうはならなかったなあ」と残念そうないっぽうで「仕方がない」と割り切っているようなセリフを言うのに、エーデルガルトと敵対したときは「あいつだって、わかってるさ! わかってて戦争を始めたんだ!」という、「わかってはいるけどやりきれない」感じのセリフを言うのだよな、カスパル。
エーデルガルトが心神耗弱状態の帝国軍において、父親に「お前は逃げてもいい」と伝えられても最期まで戦い、「すまねえなエーデルガルト…オレに…できること…」と言って討死する青燐ルートのカスパル。あくまで想像なのだけど、カスパルにとって「自分の死」は「エーデルガルトのためにできること」の最適解ではなくて、でも自分には戦うことしかできない…そのことを不甲斐なく思っているからこそのこのセリフなのでは…などと思ったりしました。
カスエデ夫婦のプロポーズはエーデルガルトからだったのかな。カスパルは色恋沙汰に疎いことに加えて自分の身分をきっちりと弁えているので、皇帝と自分が結婚なんてまったく思い浮かばなそうというか…エーデルガルトに婚姻の話を持ち出されて一瞬ポカンとしたあと承諾しそう。
カスパルとエーデルガルト、最終的に恋人同士になるのであったとしても、本編や無双のシナリオ中ではあくまで友愛であってほしいな。この二人は自分とは異なるお互いの生き方を尊重しているのがいいなと思う。
かっこいい二つ名が欲しいカスパルにエーデルガルトが彼女なりのかっこいい二つ名(シュヴァルツなんたら的な)を考案してあげるんだけど「いや、そういうんじゃねーんだわ」って断られてプリプリする回
▼カスパルとペトラ
親の仇の息子であるカスパルに対して「自分の父、誇って、話し、笑う、あなた、許せません。しかし、誰より、必死、努力する、あなた、殺す、できません、わたし……」と葛藤するペトラに「そっか……。憎いけど……それでも、オレのこと、ちゃんと仲間だって思ってくれるんだな!?(中略)お前のその言葉に、オレも応えるよ。オレを殺さないで良かったって、思わせる。絶対だ。誓うぜ」と返すカスパルがかっこよすぎる。
ペトラとの会話の中でカスパルは「たぶん逆の立場だったら……お前のこと憎んで、許せなかったと思う。そんで今度は、オレが憎まれるようになる」とも言っているのだけど、これは多分ペトラに関してだけの話ではないのだろうな。不特定多数の誰かに憎まれる覚悟があった上で彼は戦場に立っているのだろう。
カスパルが嫌な性格であったならペトラは遠慮なく憎むことができたのかもしれないけど、カスパルは努力家で仲間思いのいいやつだったのでペトラは「親の仇(の息子)への憎しみ」と「カスパルという仲間への好意」で葛藤することになったわけで…エモい…。
カスパルとペトラのペアエンド、「親世代の憎しみを子世代が受け継がない」という言葉をペトラ自身が実践して、帝国とブリギッドの和平の象徴となっているのがすごくいいなと思った。結婚するまで(結婚したあとも)ペトラの周辺にいるブリギッドの人々がかなり揉めたのだろう。その辺にもドラマがありそうでとてもいい。
無双の支援会話での「オレはお前と、仲間でいたいんだ。だから、頼むよ」というカスパルのセリフには「ペトラがベルグリーズ伯を殺したら(父親の仇という意味と、軍の要人を手にかけた者という二重の意味で)自分はペトラを許してはいけない立場になる」という意味が含まれているのだろうか。
カスパルの首に剣の刃を立てて少し血が滲むくらいまでは斬れたけれど、どうしてもそれ以上の力を込められないペトラというカスペト、とてもいい。あとほんの少し力を込めれば憎い相手は死ぬけれど、それと同時に友人も死んでしまうのだなあ。
銀雪ルートでベルグリーズ伯が処刑されたことを知ったペトラ、「仇は死んだはずなのにカスパルが悲しんでいるのを見るとなぜか喜べない」と戸惑ってほしい。
▼その他の男女カプ
エッチなお誘いをされても意味がわからず首を傾げるカスパルに怒ることなく「やっぱり気づかないよね」と、ある程度カスパルがそういった反応をすることを予測していたっぽいヒルダ。残念そうではあるけど、でも「そういうカスパル」が好きなのだなと思えてよいなあと感じる。
ヒルダに限らずカスパルとのペアエンドがある人達って、カスパルのそういう恋愛ごとに無関心なところも好意的に思っているのだろうなあと感じている。特にドロテアが顕著な印象。
貧しい生い立ちから恋愛や結婚にこだわっていたドロテアが、自分にその手の関心を示さないカスパルに対して「あなたの前でなら本当の自分でいられるの」と「それを意識しないでいい気楽さ」を感じていて、カスパルとの未来にも結婚という道を選ばなかったというペアエンド、彼女の心境の変化を感じられて本当にいいなあと思うのですよね。
カスパルは自分から能動的に性行為をしたがるタイプではなさそうだけど、甘えん坊なヒルダやベルナデッタと結婚した場合は子供をたくさん授かっているので、パートナーに甘えられたり求められたりするのは嫌いではないのかな…と。性行為そのものは好きでも嫌いでもないし、したいかしたくないかで言えば別にしたくはないけど、パートナーとのコミニュケーションは好きなので、コミニュケーションの一環としてなら好き、みたいな感じなのかな。パートナーが性行為を求めないタイプであっても良好な関係を続けられそう。
ドロテアは婚活の中に性行為も含めていたと思われるので、そういうのを求めてこないカスパルとのデート(支援会話からするに二人はたびたび一緒にお茶をしていたと思われる)は「デートそのものを楽しめる行為」として楽しかったのではないかなあ。カスパルは女性に対して「こういう服装がいい、こういう言葉を言ってほしい、自分の機嫌を取ってほしい」という欲求も持っていないだろうから、デート行く服とかも好きに選べてそこも気楽だったのではないかな。
でもまあ「せっかくデートのためにかわいい服を着てきたんだから、ちょっとは褒めてくれてもいいんじゃない?」くらいの不満はありそう。カスパルは女性に何かを求めはしないけど、女性が何を求めているのかもわからない。
無双のカスドロ支援会話の「男の子も立派な男に……」という部分も何ともセクシーで好きなのですが、その後の「でも、困っちゃうわねえ……」にも何とも言えない色気がありますね。この段階でドロテアはカスパルを異性として意識し始めた感があってたいへんにエッチです。
一部のおぼこいカスパルはおそらくドロテアにとっては本当に「男の子」であって恋愛対象ではないのだろうなあという印象。それが心身ともに成長して異性として意識する対象になるというのはなんとも味わいがあります。
カスパルとカトリーヌは分岐によっては結婚するわけだけど、その場合の記述が「二人は赤き谷に暮らしながら、農耕や狩猟に精を出し、のどかな生活を送った」というのがなんかいいな…色気がなくて…。
男女カプの方たちカプ語りを読んでいると「カスパルから矢印が出ているのが想像しにくい」「歯型をつける行為は独占欲の表れらしいからカスパルはやらなそう」「カスパルは相手に求められることで初めて『性行為を愛情表現にする』という発想を覚える性欲がないタイプなのでは」といった意見をお見かけするので、「わかります」「ですよね」とすごく頷いてしまう。
カスパル関係の男女カプでエロ要素がある二次創作だとカスドロ、カスヒル、カスシャミを拝読したことがあるのだけど、どれも女性側からお誘いしていたり、やむを得ない状況を作ったりと「どうやったらカスパル相手にエッチな展開に持ち込めるか」を書き手の方が意識している感じがして(あるいは、そういったシチュが好きだからこその組み合わせなのか)ニコニコしました。BLだとカスパルであっても性欲旺盛な攻めにされがちなので…。
▼シェズについて
風花無双のシナリオは唐突だなーと感じる部分もあるけれど、本編の主人公接待シナリオに違和感しかなかったので、仲間たちと同じ立場であるシェズを主人公とした無双のほうがシナリオに入りやすかった。
時を戻す力を持った者が優れた功績を出すというのは理解できるものの、意味不明に持ち上げられたり恋愛的な好意を持たれたりする展開には不自然さしかない。「次の戦はこういう策で行こう」とか能動的にしゃべってくれたのならそのカリスマ性にも説得力が出たのかもしれないけど。
シェズの仕官学校への入学は「学校側がシェズを監視下に置いておきたい理由がはっきりしている」状態かつ「生徒としての入学」だったので本編ほど唐突には感じなかった部分のひとつ。
支援会話も、ほかの生徒たちと同じ立場にあるシェズのほうが自然に仲良くなったように見えて好意的に読めた。というか、ベレトスが主人公補正で無条件にモテるために「プレイヤーへのサービスとしてこのキャラは主人公に好意を持っているんだな」と感じてしまうのかも。
ベレトスは授業の仕方すら知らないで教師になったのに級長たちは呆れる事もなく授業のやり方を教えてくれて、ガルグ=マクの戦いのあと寝ていただけで何の功も上げていないのに軍のトップ層に配置される。けれど、シェズは「俺も負けないぞ!」切磋琢磨しながら仲間たちと仲良くなっていくのだなあ。
シェズは自分で作った食事を仲間たちにふるまっているし、馬の世話なんかも一緒にやる。その辺も「仲間たちがシェズに好意を持っても不思議ではない」と感じる理由かも。シェズはその軍において「ゲスト」ではなく「仲間」なんだよね。
シェズは明確に「自分の考えがある主人公」という印象を受ける。プレイヤーがある程度は彼らの選択に関与できるけれど、その場合も彼らは「こうだからこうだろう」と自分の考えを口にするし。でもベレトスは自分の意見を何も言わず銀雪ではセテスのいいなり、なのに蒼月では勝手にランドルフやフレーチェを殺害するので、「ベレトスというキャラ」として見ても「プレイヤーの依代」として見てもどっちつかずでどうにも気持ちを入れにくかった。