
私が書いた二次創作には「それの愛好家たちのあいだでは主流になっている考え」に対するアンチテーゼから生まれたものも存在します。そのひとつがレトリンの話です。
自分は推しカプがリン/カスに落ち着く前はレトリンも気になっていました。
リンハルトが可愛くて気に入っており、彼が受けのカプ作品を楽しみたい→ベレトと結婚することだしお相手はベレトがいいのでは? という流れだったのではないかと思われます。
「二人の関係性が好みなのでこの二人のカプ作品を楽しみたい」という動機ではなく「推しているキャラは受けがいい」→「そのためにちょうどいい攻めをあてがおう」という動機だったわけですね。
(こういう流れで押しカプを決める人はかなりたくさんいると自分は感じているのですが、そういった考えは二次創作BLでは悪とされるために、表向きでは「そうでない」と口にする人も多いという印象があります)
そこでpixvさんに投稿されているレトリンの二次創作をいくつか拝読したところ、学生のリンハルトにベレトがエロいことをする作品ばかりじゃね!? ……と感じました。
教師が教え子に手を出す話なんて嫌だよ!
将来的に結婚するなら結婚してから交合しよう!
せめて二部に入ってからがいいです!
……という部分がひとつめに感じた「主流になっている考え」とのズレです。
自分は学生のリンハルトそのものをエロい目で見ることはできます。自分でもモブ×学生リンハルトの絵や小説を書いたりもしています。
ただそれはモブレなど「倫理観の欠如を前提とした話」の場合であり、カップリング話となるとまた別です。
16~7歳の教え子と学生寮でセックスする教師の攻めなんて嫌だよぉ!
書き手はベレトをそんな淫行教師だと思ってるんですか!?
と、ベレトを特別に推しているわけでもないのに「ベレトを倫理観の欠如した攻めとして描かれること」に抵抗を感じるのですね。しかもそれが「いい話」のように描かれているとなお嫌なわけです。
「学生リンハルト受けのエロが見たい」という点が書き手の動機なのであれば、お相手が学生のカスパルでは幼すぎるためベレトに……という流れでこのカプになったのかなと納得ではあります。でも、それならモブ攻めでいいじゃん? というのが個人的な気持ちです。
その設定に対してのもうひとつの主張が青年のリンハルトもエロい目で見て! ということです。
リンハルトやカスパルは作中で大きく成長するが故に、どちらか片方の姿のみを好んでいるというファンも多く見受けられます。
学生のカスパルをショタ(あるいは筋ショタ)枠として好む方は、カスパルが青年になることを「カスパル成長しちゃうし……」と悪いことのように言う場合もあるわけですね。
カスパルは成長するところがいいんやろがい!!(※個人の意見です)
それと同様に、学生のリンハルトを「女の子みたいな容姿と声で可愛い」と好んでいる方にとっては、青年のリンハルトは「男っぽくなりすぎてちょっと……」なのかもしれません。
青年のリンハルトやカスパルもいいぞ!
(とは言ったものの、カスパルの場合はおそらく青年姿のほうが人気だとは思うのですが)
そして、もうひとつの「ずれ」が、レトリン(リンレト)界隈では蒼月ルート設定が主流という点です。これは双方のカプを好む方達がそうおっしゃっていたので間違いないようですね。
いや、なんで??
主人公であるベレトは生徒や教会の人々とは異なり特定の勢力には属していないため、生徒の誰かとカップリングにするのであれば生徒に合わせるのが自然なはず。それが自分の考えなのですが、どうやらレトリンレト界隈では違うようなのです。
だからなんで??
という話をSNSでしていると、レトリンレト推しというわけではないフォロワーさんに「大司教ベレトという肩書にこだわりがあるのかもしれない」という意見をいただき、なるほどそういうのもあるのか……? と考え直してみました。
例えば、自分が書いたカスアネのお話は「どことは特定していないが紅花ルートではない」という設定です。これは「窮地に陥ったアネットを颯爽と現れたカスパルが助けた」という紅花ルート以外の二人のペアエンドにドラマを感じたためです。
なるほど、自分にはわからないけどそういうのがあるのかもしれない……と思ったのですが、その後の観測結果からいうと「特にそういった理由はない」というのが正解であるように思えました。
じゃあなぜ蒼月ルートなのか……というと、単に書き手の方が蒼月ルートを気に入っているだとか、ディミトリが好きだからという理由のようなのです。
いやまあそれは個人の好みなのでいいのだけど、そのためにリンハルトを祖国から引き離しちゃうの? リンハルトが家族や級友を敵に回すことになっても、親友と殺し合うことになっても構わないの??
「そういう葛藤」がテーマというのであれば蒼月ルート設定というのもまだ腑に落ちるのですが、別にそんなことはなくただラブコメをやってセックスしているだけの話でも蒼月ルート設定のようなのです。
……と、そこからベレトとリンハルト以外の「リンハルトが築いている関係性」はどうでもよいという書き手の思考が感じられてとても嫌な気分になってしまうのですね。
つまりリンハルトは祖国や家族や親友と敵対しても何も気にせずイチャイチャしているような薄情者だと! 書き手の人はそう思っているわけですね!
という心情になってしまい、界隈の人々との認識に大きな齟齬を感じたわけです。
そういう腑に落ちない気持ちから書いたのが紅花ルート設定の「君と歩む」だったりします。